活動報告BLOG

北海道大学獣医学部の野外実習を行いました【2019年】

 今年も9月24~27日の期間、北海道大学獣医学部の野外実習を受け入れました。今回の参加者は、獣医学部学生18名です。学生の皆さんには3班に分かれてもらい、知床自然センター周辺をフィールドに、それぞれのテーマに基づいた調査やサンプル収集を行ってもらいました。

 班ごとのテーマは以下の通りです。

1班:「熊の糞から考えられる嗜好性と感染症の調査」

2班:「疫ノ学調査」

3班:「鹿!植物!ダニ!」

 スケジュールは実質2日半、この中で野外調査とデータ分析、取りまとめ、発表を行います。忙しいスケジュールでしたが、水で洗ったクマの糞に目を凝らす人、顕微鏡を使って寄生虫卵を必死に探す人…、皆さん意欲的に課題に取り組んでいました。

 実習の成果報告という形で、学生の皆さんにブログ用のレポートを書いてもらいましたので、ご紹介します。

 ブログへの投稿は2013年から毎年行っていますのでよかったら過去記事もご覧ください(2018年2017年2016年2015年2014年2013年)。

 以下からが学生のレポートになります。

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羅臼ブログ第1回 「子どもたちと知床岬をめざす」

 知床半島を共有する斜里町と羅臼町が設立した知床財団は、半島を一体的に保全するために両町に事務所を置いて活動しています。私は今年4月に羅臼ビジターセンターに異動となり、羅臼町にやってきました。同じ知床とはいえ、半島の東西では気候も産業も全くちがいます。隣町でもまるで異国に来たような感覚の毎日です。これから月1回、羅臼町初心者の目で、羅臼地区事業部・土屋(つちや)が体験したことを紹介させていただきます。

「子どもたちと知床岬をめざす」

 羅臼に来て1ヶ月たった頃、私は「ふるさと少年探険隊」(以下、探険隊)に参加が決まりました。探険隊では、町内の子どもたち(小学4年生~中学3年生の希望者)が、街並みの北のはずれ、道も途絶える相泊から大自然中の海岸を歩いて、はるか24km先の知床岬をめざします。探険隊はなんと今年で37回目の伝統行事です。「ふるさとの自然に親しみ、豊かな心を養うとともに、郷土愛や忍耐力、協調心を育てる」を主旨とし、羅臼町子ども会育成協議会と羅臼町教育委員会が主催しています。参加2年目以降に入隊可能な岬まで行く「チャレンジ隊」。参加1年目の子どもは「わんぱく隊」で、途中のモイルス湾(地形図ではモイレウシ湾、語源はアイヌ語で静かな湾の意味)まで行き、野外生活をしながら先輩たちの冒険に思いを馳せます。

 出発まであと数日に迫ったある日、歩く予定にしている海岸に漂着したトドの死体にヒグマが餌付いているとの情報が入ってきていました。ヒグマはトドのような大きい餌は一度に食べきれないため、何日もそこに留まって食べ続けます。そこに人間が近づこうものなら、ヒグマは餌を守ろうと攻撃的になるため、大変危険な状況になることがあります。出発日までにトドを食べ終えて去ってくれることを願っていたのですが、ヒグマはその場所に居座り続けました。しかもそれは、遠目からは大岩と見まごうばかりの300㎏を超える真っ黒なオス。さらに周りには大グマの次は自分もと、順番待ちのヒグマたちがうろついている状態です。結果、ヒグマのいる海岸を船で迂回し、北側の海岸に移動して岬をめざすことになりました。

知床岬に思いをはせるわんぱく隊の子ども

 いよいよ出発の日を迎えました。わんぱく隊の担当の私は、子供たちとともにモイルス湾にたどり着きました。そして、ヒグマとの遭遇など様々な困難に出会うであろうチャレンジ隊の旅路を想いながら見送りました。ところが、ヒグマの王国知床の真骨頂を経験したのはわんぱく隊の方だったのです。海沿いからも山からも、出てくる出てくる、毎日が「熊祭り」。結局、計13回もヒグマを見てしまいました。クマたちは餌を探すための通り道としてモイルスを使っているようです。一方、岬まで踏破したチャレンジ隊は、不思議にも一度もヒグマを見なかったとのこと。もちろん探険隊のヒグマ対策は万全であり、子供たちはみな無事に帰還しました。

 今回私たちが目指した知床岬は、誰でも挑戦することはできます。しかし、崖の登攀や打ち寄せる大波など、ヒグマ以外にも難関をいくつも乗り越えなければなりません。子供たちは経験豊富な地元の大人たちにサポートされて困難に挑戦できました。私たちが常駐する羅臼ビジターセンターやルサフィールドハウスでは、知床岬をめざすために必須の情報を提供しています。
必ず立ち寄って準備万端にしてから挑んでください。

(担当:土屋)

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「エゾナキウサギの生態」講座を実施しました

9月15日に、上士幌町のひがし大雪自然館で「エゾナキウサギの生態」講座を実施しました。「なぜ知床財団がエゾナキウサギ?」となるかもしれませんが、私は大学院時代にエゾナキウサギの研究を東大雪地域で行っていたため、同博物館の知り合いから講座を依頼され実施しました。

エゾナキウサギの写真

参加者は地元の十勝地域から20名ほどで、これまでにエゾナキウサギを観たことがないという方が大半でした。講座は前半の座学と後半の観察会に分かれ、博物館で身につけた知識を実際に野外で確認してみるという流れです。是非、観察会で姿を観られたら、、、!鳴き声だけでも聴けたら、、、!

座学では写真や動画を通して、エゾナキウサギの生息地や食べ物について発表しました。「鳴きうさぎ」が鳴いている様子を動画で紹介したときは、小動物が発しているとは思えない高い金属音のような声に、多くの参加者が驚いていました。悲しい話でありますが、全球規模で進んでいる気候変動下ではエゾナキウサギが脆弱な存在であることについても話しました。

講座の様子

観察会では、直前まで生憎の雨だったためか、エゾナキウサギは静かな様子でした。。。しかし、登山道を歩き生息地に近づくにつれて、様々な方向から鳴き声が聴こえてきます。ついさっきまで驚いていたような鋭い声に、参加者のみなさんが慣れていく様子が見受けられました。エゾナキウサギはあまり姿を見せてくれませんでしたが、子供たちは溜め糞を何個も見つけるなど、日ごろ見ることのない岩の積みあがった地形に夢中でした。

野外観察の様子。岩場で鳴き声を待つ。

今回の講座を行ったひがし大雪自然館のある大雪山の周辺地域では、エゾナキウサギが彼方此方に分布しています。知床からは直線距離で150kmほど、運転すると4時間ほどです。しかし、エゾナキウサギにこの距離はとても遠く、知床半島でエゾナキウサギは確認されていません。恐らく、分布拡大期に知床まで到達しなかったのかなと思います。何万年後かには、知床にもいるかもしれませんね。

(サキヤマ)

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ダイキン工業「第16回知床ボランティア」開催報告

実施期間:2019年9月19日(木)~22日(日)

ダイキン工業の社員の皆さん10名にお越しいただき、秋の知床の自然の中で森づくりのお手伝いをしていただきました。

今回で15回目となるこのボランティアは、ダイキン工業様からの寄付による森づくりの一環で、有志の社員の皆さんが実際の森づくりに携わる4日間のイベントです。

期間中、一時的に雨も降りましたが、概ね順調に各種作業を進めることができました。

 

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岩尾別川の状況

9月に入り、岩尾別川にヒグマが出没するようになりました。

そのヒグマの撮影をしようとする観光客やカメラマンによる、いわゆる「ヒグマ渋滞」が発生しています。

時には、道路両側に車を停めたり、急カーブに車を停めるなど、危険な状況も発生しています。


岩尾別 急カーブに停車する人たち

 

 

 

 

 


岩尾別での混雑状況の様子

 

 

 

 

 

 

 

 


このヒグマ渋滞は、以前から発生しており、過去の活動ブログでもその状況を発信しています。

知床財団のTwitterアカウント「@bear_shiretoko」にも、今年の9月中旬に発生した岩尾別での混雑状況、人間の子どもが車に轢かれそうになった時の動画を投稿しました。最近では、マスコミにも報道されたためTVやネットニュースで目にした方もいるでしょう。


岩尾別橋の上から撮影する人たち

 

 

 

 

 

 

 


知床白書によると、2016年度には年間約173万人が知床(斜里町+羅臼町)訪れています。

このすべての人達に「ヒグマに接近しない」「エサを与えない」というルールを順守してもらうことを目標に、普及啓発活動を継続して実施してきました。

我々としても、せっかく世界遺産知床に来たのですからヒグマを見て、その生き物がもつ力強さ、命の尊さをここ知床で感じてほしいと思っています。

ですが、既にお願いベースのやり方では限界が来ています。

今後、我々に求められるのは、ヒグマを安全に見ることができる仕組みを作ることです。

この仕組みとして、例えばアクセスコントロールが考えられます。

ヒグマの核心的生息地の手前で、マイカーやレンタカーからシャトルバスへ完全に乗り換えるシステムなど。。。

 

知床が世界に誇れる場所であり続けるために、地域の皆さまや道路管理者、北海道庁、環境省等の行政機関等と協力して、この問題に対する解決方法を導き出していきたいと思います。

 

最後に、

勘違いしている方もいますが、我々はヒグマの撮影をしようとする観光客やカメラマンが悪者だとは思っていません。

誰かを悪者にしたところで、何の進展もありません。

誰も悪者にしない、安全に利用できる世界遺産あるいは国立公園の利用システムを目指していきます。

(担当 村上)

 

 

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