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【スタッフのつぶやき】幌別川でのヒグマの捕殺を受けて

2020年8月24日の昼前、幌別川の少し上流側(国指定知床鳥獣保護区内)にて、推定年齢3-4歳の若いオスグマが捕殺されました。

「このクマが駆除されたら幌別の釣り場が開放になる」、「9/1から幌別川河口での釣りが解禁になる」など、出どころ不明の噂が釣り人の間で広まっているそうです…。単にヒグマが捕殺されて、釣りの再開が期待されるというこの流れ、現地でヒグマ対応に携わる人間としては大きな疑問を持たざるを得ません。

最終的に今回のヒグマは、釣り人が釣った魚に餌付いてしまい、日中に何度も人前に姿を現すように行動を変えました。幌別川、フンベ川、オンネベツ川、金山川、オチカバケ川等々、斜里~ウトロ間の河川の周辺はいずれもヒグマの生息地です。羅臼町内の河川も同様です。
釣った魚を放置すれば、ヒグマが出現した際に釣った魚を置き去りにして避難すれば、ゴミを投げ捨てれば、釣った魚を捌いて内臓を河川に投棄すれば…今回と同じようなことが今後も繰り返されるのは確実です。そしてこれまでも散々繰り返されてきたことです。

 

昨日(8/25)も、金山川とオショバオマブ川の河口付近で45リットル袋×4つのゴミを回収しました。今年のゴミの散乱状況は、例年以上に酷い状態です。

国道上に散乱するゴミ(弁当ガラ、犬の糞など)、8月16日撮影

海岸に投棄されていた即席めんのカップ、8月25日撮影

海岸で回収されたゴミ、短時間で相当量のゴミを回収した、8月25日撮影


幌別川にときどき姿を現す、満1歳の子グマ2頭を連れた親子グマがいます。この子グマは国道沿いで、ペットボトルをかじっている姿やポリ袋を口にくわえている姿がすでに確認されています。

今回のヒグマのように、距離感が壊れてしまったヒグマと人間が共存することは不可能です。ヒグマの“距離感”を壊すような振る舞いは、絶対に止めてください。距離感が壊れてしまったヒグマは、釣り人の皆さん、観光客の皆さん、カメラマンの皆さん、そして斜里町に暮らす住民の安全を脅かす極めて危険な存在になります。

今後の対応方針に関する関係機関(主に行政機関)の会議は、まだ行われていません。仕事で立ち入らざるをえない漁業者の方以外は、幌別川河口周辺に立ち入らないよう、引き続き警告します。

 

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なお、8月24日に捕殺されたオスグマは “19MS01” と個体識別されたクマであり、昨年から遺伝子(DNA)で識別されていました。このヒグマの遺伝子が糞・毛根・皮膚片から検出された地理的範囲は非常に広く、知床岬~ルシャ~カムイワッカ~岩尾別川沿い~男の涙~フレペの滝遊歩道~幌別川河口と、約40kmの範囲にわたっていました。



19MS01は、釣り人に対してだけでなく、漁業者や自然ガイド等への異常な接近やストーキング(追跡行動)、荷物を口にくわえて持ち去りかける等の危険な行動が認められていました。そのため、知床世界自然遺産地域の関係行政機関が定めた「知床半島ヒグマ管理計画」に基づき、同計画の「行動段階2」のヒグマとして、エリアを問わない捕殺対象とされていました。

しかし、 人身事故を起こす危険性が特に高い、19MS01と同レベルで危険と私達が考えているヒグマは、知床半島にまだ少なくとも2頭が生存しています。この2頭のうち1頭はオスグマです。オスグマは19MS01のように広域を移動するため、知床半島内にこれらの危険なヒグマが現れない「絶対安全な場所」は存在しません。特にヒグマに魚や釣り餌・荷物を狙われやすい釣り人、ヒグマに接近しがちなカメラマンの皆さんは、自分の身は自分で守るようにお願いします。

また、釣った魚や食料、荷物は必ず肌身離さず持った上で、ヒグマから逃げるようにして下さい。繰り返しになりますが、あなたの魚や荷物がヒグマに奪われれば、そのヒグマの持つ“人との距離感”は破壊されます。それは周辺で働き、生活する人々の命を危険にさらすことになります。そして最終的にヒグマの命も奪われます。

 

皆さんのマナーやモラルに期待できないなら・・・ 真剣に次の手段や強制力のある仕組みづくりを考えなければならなくなります。それは、知床半島を窮屈でつまらない場所にすることでしょう。それが望ましいことなのでしょうか…。

(担当:ヒグマ対策スタッフ)

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