活動報告BLOG

第24回しれとこ森の集い(植樹祭)開催報告

全国各地から107名の参加者が集いました。

10月11日(日)秋晴れの下、毎年恒例の「森の集い(植樹祭)」を開催しました。
今年はコロナ禍の影響により、開催が危ぶまれましたが、社会情勢に適した形で感染予防対策を行い、無事に開催することができました。当日は107名もの参加者が集い、トドマツの苗木155本を植えることができました。そして植樹後は、森の散策や知床自然センターのイベントを通して、参加者の皆様と交流を深めることができました。

 

トドマツの苗木155本を植えることができました。

全国各地から駆けつけてくれた運動参加者の皆様、また運動の活動を支える各支部の皆様、そして日頃より篤い支援をいただいている各企業様、今年も知床にご参集いただき誠にありがとうございました。

100平方メートル運動の森づくりは、皆様に支えられながら着実に歩みを進めています!

 

 

, コメント (0)

ヒグマの食物資源_③ミズナラの堅果(ドングリ)

 ヒグマの食資源について、今回はミズナラの堅果(ドングリ)についてご紹介させていただきます。夏の終わりから秋にかけて、ミズナラの堅果はどんどん大きくなり、栄養価も高くなっていきます。結実すれば、一度に大量の堅果を食べられるため、9月に入るとヒグマはミズナラの堅果に大きく依存するようになります。
 ヒグマにとってミズナラの堅果は、脂肪を蓄えるための重要な食物資源ですが、その生産量には年変動があります。つまり、豊作の年もあれば、並作の年もあり、堅果が極端に成らない凶作の年もあるということです。さらに、豊凶が同調する範囲は一様ではないため、結実程度には地域差があることも知られています。そこで、ある地域のミズナラ堅果の成り具合を調べるために行うのが広域的な豊凶調査です。知床財団のヒグマ調査チームは、環境研究総合推進費※による支援を受けて、昨年からミズナラ堅果の豊凶調査を実施しています。これは、研究プロジェクトのサブテーマになっている「ヒグマ大量出没の要因解明に関する研究」の一環で実施されており、ミズナラ堅果の餌資源量の地域差や年変動がヒグマの大量出没にどのように関わっているのかを明らかにすることを目的としています。

<調査方法>
 豊凶調査の方法は様々ですが、双眼鏡を使って枝先についている堅果の数を数える「双眼鏡カウント法」を用いて調査を行っています(写真1,2)。指標木ごとに二人一組で立ち位置を変えながら30秒間のカウントを3回行います(2名で計6回のカウント)。この調査方法にはいくつかのメリットがあります。

写真1.双眼鏡でミズナラの堅果を数えている様子

写真2. 調査に使用した双眼鏡は、カールツァイス株式会社よりご提供いただきました。 とても見やすく、カウント調査に適しています。ありがとうございました。

・簡便で精度の高いデータを得られる(必要な道具は、双眼鏡・タイマー・カウンターだけ)
・堅果が熟す前の比較的早い時期に調査を実施できる。
・少ない人数で調査を実施できる(二人一組)
・調査時間が短い(二人で調査を実施すれば、30秒×3回で一本の木の結実程度が知れる)
・成りが良い、悪いなどの主観ではなく、結実程度を数値として定量化できる。

ミズナラ堅果の結実程度を広域的に把握するために、昨年から知床半島一円(斜里町・羅臼町・標津町)でミズナラの指標木を選び調査を実施しました。2019年は計117本、2020年は計121本のミズナラをカウントしています。

<調査結果>
 知床半島の斜里側と羅臼・標津側に分けて集計したものをグラフに示しました(図1)。
斜里側では、2019年は豊作といえるレベル(30秒間に約40個カウント)だったのに対し、2020年は1/4程度にカウント数が低下していました(30秒間に約10個カウント)。一方で、羅臼・標津側のミズナラ堅果のカウント数は2019年と2020年で大きな差はなく、2020年の方が少しミズナラ堅果の成りが良いようです(2019年は30秒間に約13個カウントしているのに対し、2020年は約18個カウント)。2020年のミズナラ堅果の状況をまとめると、斜里側はかなり悪い状況で、羅臼・標津側は斜里側よりは成りが良い結果となりました。参考までに、同一のエリアで撮影した大豊作のミズナラ(2019年撮影)と凶作のミズナラ(2020年撮影)の結実程度の違いを載せてみました(写真3)

 写真3.ミズナラ堅果の結実状況(左2019年, 右2020年)

 図1.ミズナラ堅果の豊凶調査結果

 今後は調査エリアをさらに細分化し、ミズナラ堅果の豊凶の地域差や年変動についてより詳細に分析する予定です。また、ミズナラ堅果の豊凶だけではなく、他の重要な餌資源であるサケマスやハイマツ資源の年変動等とヒグマの出没状況等を合わせて、ヒグマの大量出没について考察を深めて行く予定です。
 このようなミズナラ堅果の豊凶の年変動や地域差がヒグマの大量出没にどのような影響を与えるのかについて、他の重要な餌資源であるサケマスやハイマツの餌資源の年変動等とヒグマの出没状況等を合わせて、今後より考察を深めていく予定です。

※本調査・研究は、昨年度(2019年度)から3年間の予定で、「遺産価値向上に向けた知床半島における大型哺乳類の保全管理手法の開発」と題し、北海道立総合研究機構と北海道大学、知床財団が共同で取り組んでいます。実施にあたっては(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費【4-1905】を活用しています。

(梅村)

 

コメント (0)

ヒグマの食物資源_②サケマス

 ヒグマの食物資源について、今回は②サケマスについてご紹介させていただきます。サケマスは一つの河川で数千~数万匹遡上するため(写真1)、ヒグマが利用しやすい食物資源の1つです。また、ヒグマがサケマスを利用できる地域では、そうでない地域に比べて体格が大きいことが知られています。更に、サケマス類を利用することで成長が促進され、たくさん子供を産む、あるいは早く繁殖できるようになります。このことから、サケマスは単純なヒグマの食物資源としてだけでなく、個体群の保全においても非常に重要な意味を持ちます。

写真1:河川を遡上するカラフトマス 

 知床半島では8月以降になるとカラフトマスが遡上をはじめ、9月中旬頃にそのピークを迎え10月頃まで遡上します。また、マスより時期を遅らせてサケ(主にシロザケ)が9月頃より2月頃までかけて遡上します。知床半島のルシャ川とテッパンベツ川の2河川では、2012年以降に林野庁(北海道森林管理局)を実施主体として、遡上能力・数が多い・遡上時期が限られているという特徴から、カラフトマスを対象にした調査とその結果を基にした遡上数が推定されています(図1、出典;エゾシカヒグマワーキング資料・林野庁)。調査は基本的に1年間隔で行われていますが、カラフトマスの豊凶も2年周期と言われており、2015年・2017年・2019年の調査は不漁年にあたっています。そこで「ヒグマ大量出没の要因解明に関する研究」※では、豊漁年周期にあたると考えられる今年、8月18日―10月5日の期間で計13回の調査を行っています。

図1 ルシャ川及びテッパンベツ川におけるカラフトマスの推定遡上数※1と北海道全体におけるカラフトマスの来遊数※2.
※1:推定遡上数は台形近似法(AUC法)を用いて算出(横山ほか、2010)
※2:北海道区水産研究所 http://salmon.fra.affrc.go.jp/zousyoku/salmon/salmon.html

 カラフトマスの調査は、河川中において基準となる場所(ライン)を定め(写真2)、高い場所から俯瞰してラインのマスを注視して、ラインを遡上・降下するマスを二時間おきに20分間、1日5回カウントします(写真3)。今年のマスのピークと報じられた(https://www.yomiuri.co.jp/national/20200911-OYT1T50112/)9月11日(7回目の調査)には20分で200匹を超える遡上が確認されました。10月5日までの調査を終えた後は、得られたデータを基に、今シーズンで何匹のカラフトマスが河川を遡上したか推定されることになります。2013年以降、7年ぶりの豊漁年調査と考えられるため、今後の集計や前回の豊漁年(2013年)時の推定遡上数との比較が期待されます。

写真2:段差部分を基準のライン(黄丸)とした

写真3:ラインより遡上・降下するマスをそれぞれカウントしている

※2019年度から3年間の予定(本年2年目)で、「遺産価値向上に向けた知床半島における大型哺乳類の保全管理手法の開発」と題し、北海道立総合研究機構と北海道大学、知床財団が共同で調査・研究に取り組んでいます。実施にあたっては(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費【4-1905】を活用しています。

横山雄哉, 越野陽介, 宮本幸太, 工藤秀明, 北田修一, 帰山雅秀. (2010). 知床半島ルシャ川におけるカラフトマスOncorhynchus gorbuschaの産卵遡上動態評価. 日本水産学会誌, 76(3), 383-391

(雨谷)

コメント (0)

ヒグマの食物資源_①ハイマツの実(球果)

 ヒグマの出没(人への生活圏への接近・侵入)件数は年によって変動があります。そこで、昨年から環境研究総合推進費を活用し、「クマの大量出没がなぜ生じるのか」※というテーマでその変動の解明に取り組んでいます。これまでの報告で、ヒグマは食資源が不足すると行動範囲が拡大して人里にも降りる頻度が高くなるため、より多く目撃されるようになると考えられています。
 ヒグマは1年を通して多種多様な食物資源を利用します(図テーマ2_ハイマツ、サケ、ドングリ)。いつ・どこで何を食べているのかは、糞を拾って調べます(詳しくは「冬の間中、ヒグマの糞を洗って、内容物を分析しています」https://www.shiretoko.or.jp/report/2020/01/4914.html をご覧ください)。食資源(草本や木の実、昆虫、魚、エビなどなど)の中でも、特に①ハイマツの実(球果)、②サケマス、③ドングリ(ミズナラ)は冬眠前の脂肪を十分に蓄える上で特に重要で、これらの豊凶が大量出没年と関連が強いのではないかと注目しています。

図テーマ2_ハイマツ、サケ、ドングリ

 そこで、今回は①ハイマツの実(球果)についてご紹介させていただきます。ハイマツは高木が生育できない高標高(森林限界以高)に生育しており、その球果(写真1)は、リスやホシガラスなど高山帯の多くの動物に利用され(写真2)、ヒグマが食べた糞(写真3)もよく見つかります。知床は他の地域よりもハイマツの出現する標高が低く、約400-500mからハイマツが生育しています(場所にもよりますが、概ね道内では1300m程度から、本州では1700m程度からの生育になります)。そのためか、海沿いの地区でもハイマツ糞が多く確認されており、半島全域のヒグマが利用できる資源と考えられます。

写真1:ハイマツの球果

写真2 : 小動物の採食痕

写真3:ヒグマのハイマツ糞、小動物とは異なり丸ごと食べているため、すごい量の殻を含みます

 ハイマツの球果もドングリ同様に豊凶年の周期があります。また、球果が落ちると球果痕(写真4)が付くため、過去20年ほどまで遡った球果の豊凶年を調査することができます。そこで、よくハイマツ糞が発見される硫黄山周辺で球果痕の調査を行いました(写真5)。今回の調査結果でも、ハイマツ球果の豊凶年があることを確認することができました。一方で、過去の出没件数が多く(糞にハイマツが殆ど含まれていないと)報告されている年で、凶作とはいえない(平年並みの実りがあったはずの)年がありました。
この不一致の理由として、
 ・「半島」、「海沿い」という特徴をもつ知床では場所(斜里側や羅臼側、半島先端部や基部側)や標高で豊凶周期が明瞭に異なる
 ・ヒグマが利用していなかった年は、球果がなっていた(凶作年ではなかった)が、採食前になんらかの要因で落ちてしまった(記録的な暴風雨、病害等)
等が考えられます。そのため、来年にかけて複数地点での調査の実施を行い、ハイマツの豊凶と大量出没の関連性を解明していく予定です。

写真4:〇が球果の付いた跡。20年弱分は実のなった痕跡を追えます

写真5:ハイマツ豊凶の調査の様子

※2019年度から3年間の予定(本年2年目)で、「遺産価値向上に向けた知床半島における大型哺乳類の保全管理手法の開発」と題し、北海道立総合研究機構と北海道大学、知床財団が共同で調査・研究に取り組んでいます。実施にあたっては(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費【4-1905】を活用しています。

(雨谷) 
        

 

コメント (0)

北海道大学獣医学部の野外実習を行いました【2020年】

 今年も9月14日~18日の期間、北海道大学獣医学部の野外実習を受け入れました。今回の参加者は獣医学部の4年生、計21名です。学生の皆さんには3班に分かれてもらい、知床自然センターの周辺で、それぞれのテーマに基づいた調査やサンプル収集を行ってもらいました。

 

 班ごとのテーマは以下の通りです。

1班:「動物の生態」

2班:「動物の感染症」

3班:「知床自然遺産」

 

 実質3日間という忙しいスケジュールの中で、野外調査とデータ分析、とりまとめ、発表まで行います。その中で、学生の皆さんには今回の実習の成果報告として、ブログ用のレポートを書いてもらいました。

 

 ブログへの投稿は2013年から毎年行っていますので、良ければ過去の記事もご覧ください。

2019年2018年2017年2016年2015年2014年2013年

 

 以下が、学生の皆さんのレポートです。


1班「ドラマチック知床〜無限の自然に迫る」

 私たちの班はクマ・キツネ・タヌキの食性を調べ、雑食動物であるこれらがどのように共生しているのかを考えました。そのために糞便を採取し、ポイントフレーム法で分析しました。

 まずヒグマの糞は、内容物にいくつかパターンがありました。

 ミズナラが中心のものは、ガチガチの軽石を素手で砕いている気分で大変でした。さらにこの時期はカラフトマスが多く川にいるので、それを食べたらしい糞便もありました。魚を含む糞はドロドロしていて臭かったです。他に種子や草本が多く含まれる糞もありました。

 このカラフトマスですが、調査の途中でたくさん川に見られました。偶数年は豊漁らしく、今年は狩りが下手なクマでも捕まえられるくらいびっしりだそうです。

 子連れのクマが河口にいるのを遠目に見ましたが、もしかしたらチビなクマでも狩りができていたかもしれません。見てみたかったですね。

 

 話を戻して、次にキツネ糞の結果です。

 サクラやサルナシなども含まれていましたが、動物の毛や昆虫の羽などが多く観察されました。個人的な感想ですが、臭いはクマより臭かったです。

 最後にため糞が特徴的なタヌキ糞です。分析することはできませんでしたが、2日目に観察することができました。

 内容物は、虫ではコガネムシとセミの幼虫、植物ではヤマグワとサクラが多く見られました。糞のあった場所はコンクリートの橋の真ん中でしたが、糞のところにだけ草が生えていたので、もしかしたら糞中の種子が発芽したのかもしれません。思わぬところで自然の強さを感じました。

 研修所に帰ってからは、糖度計を用いて採集した果実の糖度を測定し、一部は食べてみました。

 サルナシはキウイのような味がしましたが、まだ熟していなかったので酸っぱくて舌が痺れました。ヤマブドウも酸っぱかったですが、こちらは美味しかったです。

 ナナカマドは苦くて非常に不味かったです。周りにいた友達にも食べてもらいましたが、全員が顔をしかめていました(驚いたことに、糖度はかなり高かったです!)。

 私一番のおすすめはサクラ(エゾヤマザクラ?)の実です。ブドウのような味で甘くて美味しいです。

 

 結論として、今回調べた3種(ヒグマ・キタキツネ・エゾタヌキ)は食べ物に被りはあるものの、主としている食べ物が違うため争いは起きないのではないか、という考えに至りました。

 この仮説を確かめるためにはもっとたくさんの糞便、特にその時期の新しい糞を調査していく必要があると思います。また、痕跡や詳しい植生についてもさらに調査できると、より細かい分析が可能になるでしょう。

 

 3日間にわたり、知床財団の方々には大変お世話になりました。動植物に関する知識や法律的な側面のお話も聞くことができ、とても勉強になりました。

 貴重な体験をありがとうございました。

 

 p.s.今年はスズメバチが多いと脅されていましたが、案の定スズメバチ御本尊(巣)を3回ほど拝みました。早期発見と素早いルート変更のおかげで刺されずに済んで、本当に良かったです。

 

2班「知床における野生動物の感染症」

 2班は寄生虫卵チーム、ネズミチーム、ダニチームの3チームにさらに分かれて、知床の野生動物における感染症の保有状況を調査しました。

 

(寄生虫卵チーム)

 私たちのチームはキツネとシカの糞便に含まれる寄生虫卵の検査を行いました。

 キツネ糞はエキノコックス、シカ糞は肝蛭という、それぞれ人間にも感染する恐れのある寄生虫の検査を行いました。

 キツネ糞12サンプルと知床財団の職員さんの犬の糞1サンプル、シカ糞は9サンプルを集めました。そのうち1つは遭遇したエゾシカの新鮮な糞便を用いて検査しました。キツネ糞はショ糖遠心法、シカ糞はホルマリン・エーテル法で検査しました。

 結果として、キツネ・犬はエキノコックス陰性、シカは肝蛭陰性で、そのほかの寄生虫卵も見つかりませんでした。しかしこの結果は、決して寄生虫がいないことを示すわけではなく、サンプル数の不足や私たちの力不足で検出できなかった可能性もあるので、川や湖の水をそのまま飲んだり、キツネを見かけても触ったりしないようにしましょう。

 

(ネズミチーム)

 私たちのチームは、自然界でネズミが保有している病原体を調査するため、ノネズミを捕獲し、血液、肺、肝臓を採取しました。

 まず、シャーマントラップを他班とも協力して、ネズミの気持ちになりながら設置しました(ネズミの捕獲は特別な許可を得て実施しています)。翌日、16匹のネズミが罠にかかっていました。エゾアカネズミが多く、ヒメネズミも2匹みられました。捕獲したネズミには安楽死処置を実施し、その後解剖を行いました。血液は塗抹標本を作成し、血液細胞寄生性の病原体がいるかどうかを観察しました。結果、今回作成した標本には、病原体がみられませんでした。肺と肝臓は札幌に持ち帰って引き続き検査してみたいと思います。

 今回は、野外で実際に野生のネズミを捕獲して検査するという、普段なかなか体験できない実習を、自分たちが主体となって実施でき、勉強になりました。

 病原体が全く検出されなかったことは、個人的には少し残念でしたが、知床のような観光客も多い地域に危険な病原体が少ないことに安心しました。

 

(ダニチーム)

 私たちのチームは、マダニが媒介する感染症の病原体の保有率を調査するため、ダニを捕獲しその種類の同定を行いました。なお、病原体の検出作業まで学外で行うのは危険であると判断し、大学に持ち帰ってから後日行う予定です。

 まず、白い布を使い、近づいてくるものに飛びつくというダニの性質を利用したフランネル法を用いて、ダニの捕獲を行いました。場所は、シカがよく出現する草地2か所とネズミチームがネズミを捕獲した雑木林にしました。捕獲できたダニは、成ダニが9匹、若ダニが36匹となりました。回収はしませんでしたが、非常に多くの幼ダニも確認することができました。その後実験室に持ち帰り、顕微鏡を用いてダニの種類を同定しました。結果、成ダニはオオトゲチマダニが8匹、ヤマトチマダニが1匹で、若ダニはチマダニ属が23匹、マダニ属が13匹でした。

 今回調査しようと考えている病原体(ライム病ボレリア)は、シュルツェマダニというダニが媒介することが知られています。そのためシュルツェマダニの成ダニが捕獲されなかったことでその病原体の検出は難しくなってしまいましたが、感染のリスクとしては低いということがわかりました。しかし、今回捕獲した時期は成ダニが多くみられる季節ではないため、成ダニが増える春~夏にかけては依然として感染リスクは否定できないと思います。

 

 今回の実習中には、危険な病原体は検出されませんでしたが、自然界には野生動物が媒介し、ヒトが感染する疾病が数多くあります。野生動物とは正しい距離でお付き合いしていきましょう!

 

3班

 3班では、知床が世界遺産に登録された理由の一つである「生物多様性の豊かさ」を調べるため、種の多様性や環境の多様性に注目して動物の痕跡調査と植生調査を行いました。また、近年問題となっているエゾシカによる食害についても調べるため、シカ柵内外での植生の比較も行いました。

 

1.動物たちの痕跡、多様性調査

 知床の様々な場所(森林、海岸、沢、草原)を歩きながら、動物の居た痕跡を見つけ、事前学習で作成した痕跡記録シートに記録しました。他の班にも協力してもらい、結果をGPSで地図上に示して分析しました。動物の痕跡として、糞、足跡、食痕、角こすり、背こすりなどを発見しました。痕跡を発見した動物種としては、エゾシカが最も多く、他に、ヒグマ、キタキツネ、タヌキ、クマゲラ、シマフクロウ、エゾヤチネズミなども見つかりました。

 シカの痕跡はどの班でも見られたことからシカの個体数は多く分布域の偏りが少ないこと、ヒグマの痕跡は発見場所が偏っていたことから分布域にも偏りがある可能性があること、魚を食べる鳥類の痕跡が多数見つかったのはこの時期にマスが川を遡上する影響によること、などが地図上での種ごとの痕跡分布状況、各班での発見動物種の違いなどから考察できました。

 また、調査する中では痕跡だけでなく、種々の昆虫や魚類、鳥類、甲殻類なども見つかりました。加えて、海岸や森林など環境の違いによる植物種の多様性も見られました。1日半の調査のみでも以上のように様々な種の生物およびその痕跡が見られたことから、知床における種の多様性の壮大さを感じることができました。

 

2.エゾシカ柵内外での植生調査

 エゾシカ柵の内外で、10×10㎡の区画をそれぞれ2地点ずつ取り、事前に作成した調査シートを用いて区画内の植生を調べました。樹木の高さや下枝の有無、稚樹の種類や数、林床植生、シカの痕跡などを調査項目として設定しました。結果として、シカ柵外ではシカ柵内より稚樹や林床の植物の数も種類も少なく、シカ柵外で残存している植物はササやトドマツなどシカの嗜好性が低い植物ばかりであることが分かりました。シカ柵内には、キハダ、ミヤママタタビ、オヒョウなど、シカが好む植物が多く確認できました。ちなみに、シカ柵外の草原の植生も、ハンゴウソウやワラビなど、シカの嗜好性が低いもので占められていました。

 以上のように、シカの存在によって植物が食害を受けたり植物種が減少したりすることから、知床の森林における多様性を持続させるためには、シカの個体数調整やシカ柵による防御が今後も必要となると考えられました。

 


 

学生の皆さんお疲れさまでした!

(担当:葛西)

コメント (0)

ブログ