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羅臼ブログ第1回 「子どもたちと知床岬をめざす」

 知床半島を共有する斜里町と羅臼町が設立した知床財団は、半島を一体的に保全するために両町に事務所を置いて活動しています。私は今年4月に羅臼ビジターセンターに異動となり、羅臼町にやってきました。同じ知床とはいえ、半島の東西では気候も産業も全くちがいます。隣町でもまるで異国に来たような感覚の毎日です。これから月1回、羅臼町初心者の目で、羅臼地区事業部・土屋(つちや)が体験したことを紹介させていただきます。

「子どもたちと知床岬をめざす」

 羅臼に来て1ヶ月たった頃、私は「ふるさと少年探検隊」(以下、探検隊)に参加が決まりました。探検隊では、町内の子どもたち(小学4年生~中学3年生の希望者)が、街並みの北のはずれ、道も途絶える相泊から大自然中の海岸を歩いて、はるか24km先の知床岬をめざします。探検隊はなんと今年で37回目の伝統行事です。「ふるさとの自然に親しみ、豊かな心を養うとともに、郷土愛や忍耐力、協調心を育てる」を主旨とし、羅臼町子ども会育成協議会と羅臼町教育委員会が主催しています。参加2年目以降に入隊可能な岬まで行く「チャレンジ隊」。参加1年目の子どもは「わんぱく隊」で、途中のモイルス湾(地形図ではモイレウシ湾、語源はアイヌ語で静かな湾の意味)まで行き、野外生活をしながら先輩たちの冒険に思いを馳せます。

 出発まであと数日に迫ったある日、歩く予定にしている海岸に漂着したトドの死体にヒグマが餌付いているとの情報が入ってきていました。ヒグマはトドのような大きい餌は一度に食べきれないため、何日もそこに留まって食べ続けます。そこに人間が近づこうものなら、ヒグマは餌を守ろうと攻撃的になるため、大変危険な状況になることがあります。出発日までにトドを食べ終えて去ってくれることを願っていたのですが、ヒグマはその場所に居座り続けました。しかもそれは、遠目からは大岩と見まごうばかりの300㎏を超える真っ黒なオス。さらに周りには大グマの次は自分もと、順番待ちのヒグマたちがうろついている状態です。結果、ヒグマのいる海岸を船で迂回し、北側の海岸に移動して岬をめざすことになりました。

知床岬に思いをはせるわんぱく隊の子ども

 いよいよ出発の日を迎えました。わんぱく隊の担当の私は、子供たちとともにモイルス湾にたどり着きました。そして、ヒグマとの遭遇など様々な困難に出会うであろうチャレンジ隊の旅路を想いながら見送りました。ところが、ヒグマの王国知床の真骨頂を経験したのはわんぱく隊の方だったのです。海沿いからも山からも、出てくる出てくる、毎日が「熊祭り」。結局、計13回もヒグマを見てしまいました。クマたちは餌を探すための通り道としてモイルスを使っているようです。一方、岬まで踏破したチャレンジ隊は、不思議にも一度もヒグマを見なかったとのこと。もちろん探検隊のヒグマ対策は万全であり、子供たちはみな無事に帰還しました。

 今回私たちが目指した知床岬は、誰でも挑戦することはできます。しかし、崖の登攀や打ち寄せる大波など、ヒグマ以外にも難関をいくつも乗り越えなければなりません。子供たちは経験豊富な地元の大人たちにサポートされて困難に挑戦できました。私たちが常駐する羅臼ビジターセンターやルサフィールドハウスでは、知床岬をめざすために必須の情報を提供しています。
必ず立ち寄って準備万端にしてから挑んでください。

(担当:土屋)

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