カテゴリー  お知らせ(ヒグマ)

幌別川河口のサケマス釣り~2021年の状況~

知床国立公園の斜里町側入口に位置する幌別川は、サケやマス釣りの人気スポットです。

2020年は、人から魚を奪うことを学習したヒグマが捕殺されましたが、幌別川周辺は、2021年も依然として人為的なゴミに餌付いてしまったヒグマを含む多数のヒグマが活動しており、釣りをするにしては非常にリスクの高い場所です。【釣りをする場合は、以下のルールを必ず守ってください。

 

1.ヒグマ出現時は、全ての荷物と魚を持って避難する

2.速やかな避難のために・・・

 ・釣った魚はすぐにネット等に入れる

 ・荷物は少なくし、魚と共に常に手の届く距離で管理する

 ・釣魚は一度に運べる本数に自制する

3.釣った魚は解体せず、全て持ち帰る】

 

2021年はゴミに餌付いた特定の要注意ヒグマも昨年に引き続き幌別周辺での活動が確認されており、国立公園側(右岸側)での釣りは背後から急にヒグマが出てきて特に危険なため、2021年については、幌別の釣りを守る会と関係機関(環境省、北海道森林管理局、北海道、斜里町、知床財団)が協議した結果、幌別川河口よりも国立公園側(右岸側)の海岸での釣りを自粛という判断になりました。

知床国立公園は多くのヒグマが生息しています。その生息域でマスやサケが遡上する数少ない河川が幌別川です。我々が個体識別しているヒグマで幌別川を利用すると予想される個体は、26頭います。そんなところで釣りをしていては、ヒグマとの軋轢が発生しないはずがありません。毎年必ず複数頭のヒグマが幌別川を餌場として利用しているという事実をどうかご理解ください。

 

※【 】内の文章は2021年7月22日に追加しました。

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母グマとはぐれてしまった0歳の子グマの対応について

5/12に母グマとはぐれてしまった0歳2頭の子グマが目撃されました。人が接近しすぎないように監視員を配置し、遠くから母グマが帰ってくるのを見守っていましたが、日没まで母グマは姿を現しませんでした。

 

翌日の朝に現地を確認すると、子熊はいなくなっていましたが、午後に再発見しました。1頭は生存していましたが、もう1頭は残念ながら死亡を確認しました。再発見した場所は道路脇であり、放置しておくと母グマが戻ってきた際に人身事故の恐れがあるため、生存個体については、利用者に危険が及ばず、なおかつ母グマと再会できる可能性のある母グマの行動圏内に移動放獣しました。また、死亡個体については現場から回収しました。

もし単独の子熊を見つけても、決して近づかないようにお願いします。付近に母グマが潜んでいる可能性があり大変危険です。

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2021年3月19日冬眠から明けたヒグマの姿を確認

2021年3月19日、知床で冬眠明けしたヒグマの姿を、今シーズン初めて確認しました。

確認された場所は斜里町の国立公園外でした。

 

知床でヒグマが活動を開始するのは例年3~4月です。

過去をさかのぼると、2015年は3月12日、2016年は3月5日、2017年は3月17日、2018年は4月2日、2019年は3月10日、2020年は3月12日でした。

野外で活動する際は、ヒグマがいることを頭に入れておく必要があります。

ヒグマの対処法については、こちらを参照ください。

 

3月22日にもヒグマの目撃がありました。

 

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ヒグマの食物資源_③ミズナラの堅果(ドングリ)

 ヒグマの食資源について、今回はミズナラの堅果(ドングリ)についてご紹介させていただきます。夏の終わりから秋にかけて、ミズナラの堅果はどんどん大きくなり、栄養価も高くなっていきます。結実すれば、一度に大量の堅果を食べられるため、9月に入るとヒグマはミズナラの堅果に大きく依存するようになります。
 ヒグマにとってミズナラの堅果は、脂肪を蓄えるための重要な食物資源ですが、その生産量には年変動があります。つまり、豊作の年もあれば、並作の年もあり、堅果が極端に成らない凶作の年もあるということです。さらに、豊凶が同調する範囲は一様ではないため、結実程度には地域差があることも知られています。そこで、ある地域のミズナラ堅果の成り具合を調べるために行うのが広域的な豊凶調査です。知床財団のヒグマ調査チームは、環境研究総合推進費※による支援を受けて、昨年からミズナラ堅果の豊凶調査を実施しています。これは、研究プロジェクトのサブテーマになっている「ヒグマ大量出没の要因解明に関する研究」の一環で実施されており、ミズナラ堅果の餌資源量の地域差や年変動がヒグマの大量出没にどのように関わっているのかを明らかにすることを目的としています。

<調査方法>
 豊凶調査の方法は様々ですが、双眼鏡を使って枝先についている堅果の数を数える「双眼鏡カウント法」を用いて調査を行っています(写真1,2)。指標木ごとに二人一組で立ち位置を変えながら30秒間のカウントを3回行います(2名で計6回のカウント)。この調査方法にはいくつかのメリットがあります。

写真1.双眼鏡でミズナラの堅果を数えている様子

写真2. 調査に使用した双眼鏡は、カールツァイス株式会社よりご提供いただきました。 とても見やすく、カウント調査に適しています。ありがとうございました。

・簡便で精度の高いデータを得られる(必要な道具は、双眼鏡・タイマー・カウンターだけ)
・堅果が熟す前の比較的早い時期に調査を実施できる。
・少ない人数で調査を実施できる(二人一組)
・調査時間が短い(二人で調査を実施すれば、30秒×3回で一本の木の結実程度が知れる)
・成りが良い、悪いなどの主観ではなく、結実程度を数値として定量化できる。

ミズナラ堅果の結実程度を広域的に把握するために、昨年から知床半島一円(斜里町・羅臼町・標津町)でミズナラの指標木を選び調査を実施しました。2019年は計117本、2020年は計121本のミズナラをカウントしています。

<調査結果>
 知床半島の斜里側と羅臼・標津側に分けて集計したものをグラフに示しました(図1)。
斜里側では、2019年は豊作といえるレベル(30秒間に約40個カウント)だったのに対し、2020年は1/4程度にカウント数が低下していました(30秒間に約10個カウント)。一方で、羅臼・標津側のミズナラ堅果のカウント数は2019年と2020年で大きな差はなく、2020年の方が少しミズナラ堅果の成りが良いようです(2019年は30秒間に約13個カウントしているのに対し、2020年は約18個カウント)。2020年のミズナラ堅果の状況をまとめると、斜里側はかなり悪い状況で、羅臼・標津側は斜里側よりは成りが良い結果となりました。参考までに、同一のエリアで撮影した大豊作のミズナラ(2019年撮影)と凶作のミズナラ(2020年撮影)の結実程度の違いを載せてみました(写真3)

 写真3.ミズナラ堅果の結実状況(左2019年, 右2020年)

 図1.ミズナラ堅果の豊凶調査結果

 今後は調査エリアをさらに細分化し、ミズナラ堅果の豊凶の地域差や年変動についてより詳細に分析する予定です。また、ミズナラ堅果の豊凶だけではなく、他の重要な餌資源であるサケマスやハイマツ資源の年変動等とヒグマの出没状況等を合わせて、ヒグマの大量出没について考察を深めて行く予定です。
 このようなミズナラ堅果の豊凶の年変動や地域差がヒグマの大量出没にどのような影響を与えるのかについて、他の重要な餌資源であるサケマスやハイマツの餌資源の年変動等とヒグマの出没状況等を合わせて、今後より考察を深めていく予定です。

※本調査・研究は、昨年度(2019年度)から3年間の予定で、「遺産価値向上に向けた知床半島における大型哺乳類の保全管理手法の開発」と題し、北海道立総合研究機構と北海道大学、知床財団が共同で取り組んでいます。実施にあたっては(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費【4-1905】を活用しています。

(梅村)

 

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ヒグマの食物資源_②サケマス

 ヒグマの食物資源について、今回は②サケマスについてご紹介させていただきます。サケマスは一つの河川で数千~数万匹遡上するため(写真1)、ヒグマが利用しやすい食物資源の1つです。また、ヒグマがサケマスを利用できる地域では、そうでない地域に比べて体格が大きいことが知られています。更に、サケマス類を利用することで成長が促進され、たくさん子供を産む、あるいは早く繁殖できるようになります。このことから、サケマスは単純なヒグマの食物資源としてだけでなく、個体群の保全においても非常に重要な意味を持ちます。

写真1:河川を遡上するカラフトマス 

 知床半島では8月以降になるとカラフトマスが遡上をはじめ、9月中旬頃にそのピークを迎え10月頃まで遡上します。また、マスより時期を遅らせてサケ(主にシロザケ)が9月頃より2月頃までかけて遡上します。知床半島のルシャ川とテッパンベツ川の2河川では、2012年以降に林野庁(北海道森林管理局)を実施主体として、遡上能力・数が多い・遡上時期が限られているという特徴から、カラフトマスを対象にした調査とその結果を基にした遡上数が推定されています(図1、出典;エゾシカヒグマワーキング資料・林野庁)。調査は基本的に1年間隔で行われていますが、カラフトマスの豊凶も2年周期と言われており、2015年・2017年・2019年の調査は不漁年にあたっています。そこで「ヒグマ大量出没の要因解明に関する研究」※では、豊漁年周期にあたると考えられる今年、8月18日―10月5日の期間で計13回の調査を行っています。

図1 ルシャ川及びテッパンベツ川におけるカラフトマスの推定遡上数※1と北海道全体におけるカラフトマスの来遊数※2.
※1:推定遡上数は台形近似法(AUC法)を用いて算出(横山ほか、2010)
※2:北海道区水産研究所 http://salmon.fra.affrc.go.jp/zousyoku/salmon/salmon.html

 カラフトマスの調査は、河川中において基準となる場所(ライン)を定め(写真2)、高い場所から俯瞰してラインのマスを注視して、ラインを遡上・降下するマスを二時間おきに20分間、1日5回カウントします(写真3)。今年のマスのピークと報じられた(https://www.yomiuri.co.jp/national/20200911-OYT1T50112/)9月11日(7回目の調査)には20分で200匹を超える遡上が確認されました。10月5日までの調査を終えた後は、得られたデータを基に、今シーズンで何匹のカラフトマスが河川を遡上したか推定されることになります。2013年以降、7年ぶりの豊漁年調査と考えられるため、今後の集計や前回の豊漁年(2013年)時の推定遡上数との比較が期待されます。

写真2:段差部分を基準のライン(黄丸)とした

写真3:ラインより遡上・降下するマスをそれぞれカウントしている

※2019年度から3年間の予定(本年2年目)で、「遺産価値向上に向けた知床半島における大型哺乳類の保全管理手法の開発」と題し、北海道立総合研究機構と北海道大学、知床財団が共同で調査・研究に取り組んでいます。実施にあたっては(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費【4-1905】を活用しています。

横山雄哉, 越野陽介, 宮本幸太, 工藤秀明, 北田修一, 帰山雅秀. (2010). 知床半島ルシャ川におけるカラフトマスOncorhynchus gorbuschaの産卵遡上動態評価. 日本水産学会誌, 76(3), 383-391

(雨谷)

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