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ヒグマの食物資源_②サケマス

 ヒグマの食物資源について、今回は②サケマスについてご紹介させていただきます。サケマスは一つの河川で数千~数万匹遡上するため(写真1)、ヒグマが利用しやすい食物資源の1つです。また、ヒグマがサケマスを利用できる地域では、そうでない地域に比べて体格が大きいことが知られています。更に、サケマス類を利用することで成長が促進され、たくさん子供を産む、あるいは早く繁殖できるようになります。このことから、サケマスは単純なヒグマの食物資源としてだけでなく、個体群の保全においても非常に重要な意味を持ちます。

写真1:河川を遡上するカラフトマス 

 知床半島では8月以降になるとカラフトマスが遡上をはじめ、9月中旬頃にそのピークを迎え10月頃まで遡上します。また、マスより時期を遅らせてサケ(主にシロザケ)が9月頃より2月頃までかけて遡上します。知床半島のルシャ川とテッパンベツ川の2河川では、2012年以降に林野庁(北海道森林管理局)を実施主体として、遡上能力・数が多い・遡上時期が限られているという特徴から、カラフトマスを対象にした調査とその結果を基にした遡上数が推定されています(図1、出典;エゾシカヒグマワーキング資料・林野庁)。調査は基本的に1年間隔で行われていますが、カラフトマスの豊凶も2年周期と言われており、2015年・2017年・2019年の調査は不漁年にあたっています。そこで「ヒグマ大量出没の要因解明に関する研究」※では、豊漁年周期にあたると考えられる今年、8月18日―10月5日の期間で計13回の調査を行っています。

図1 ルシャ川及びテッパンベツ川におけるカラフトマスの推定遡上数※1と北海道全体におけるカラフトマスの来遊数※2.
※1:推定遡上数は台形近似法(AUC法)を用いて算出(横山ほか、2010)
※2:北海道区水産研究所 http://salmon.fra.affrc.go.jp/zousyoku/salmon/salmon.html

 カラフトマスの調査は、河川中において基準となる場所(ライン)を定め(写真2)、高い場所から俯瞰してラインのマスを注視して、ラインを遡上・降下するマスを二時間おきに20分間、1日5回カウントします(写真3)。今年のマスのピークと報じられた(https://www.yomiuri.co.jp/national/20200911-OYT1T50112/)9月11日(7回目の調査)には20分で200匹を超える遡上が確認されました。10月5日までの調査を終えた後は、得られたデータを基に、今シーズンで何匹のカラフトマスが河川を遡上したか推定されることになります。2013年以降、7年ぶりの豊漁年調査と考えられるため、今後の集計や前回の豊漁年(2013年)時の推定遡上数との比較が期待されます。

写真2:段差部分を基準のライン(黄丸)とした

写真3:ラインより遡上・降下するマスをそれぞれカウントしている

※2019年度から3年間の予定(本年2年目)で、「遺産価値向上に向けた知床半島における大型哺乳類の保全管理手法の開発」と題し、北海道立総合研究機構と北海道大学、知床財団が共同で調査・研究に取り組んでいます。実施にあたっては(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費【4-1905】を活用しています。

横山雄哉, 越野陽介, 宮本幸太, 工藤秀明, 北田修一, 帰山雅秀. (2010). 知床半島ルシャ川におけるカラフトマスOncorhynchus gorbuschaの産卵遡上動態評価. 日本水産学会誌, 76(3), 383-391

(雨谷)

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