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SEEDS編集部が選ぶ、この記事面白かった!①

当財団の活動を支援してくださっている賛助会員の皆様向けに年4回発行しているSEEDS(シーズ)のバックナンバーの中から、SEEDS編集部が面白かった!と思う記事を編集部が独断で選び、ご紹介します。

2011年夏号No.211「知床・人・インタビュー」

浜の郵便屋さん
「野田 敏明さん」

夏になると、羅臼の昆布漁師は、「番屋」と呼ばれる作業小屋で寝泊まりし、朝から晩まで昆布漁の作業に取りかかります。羅臼の相泊という地区から北の知床岬方向へ向かった先、およそ2.5キロメートルの浜にも昆布番屋があります。しかし、相泊から先に道路はなく、砂利の上を歩いて進むしかありません。
そんな場所へ、毎日歩いて郵便物を届ける野田さんに、今回はお話を伺いました。

〈インタビュアー:山本幸〉




山本:夏、相泊から先の道路のない、砂利の浜を歩いて郵便配達をしている、とお聞きしました。

相泊から先の風景

野田:そうだね。日曜日以外は毎日配達しているよ。自分が休みの時は、若い職員も手伝ってくれているけどね。毎年、かぎおろし(昆布漁が始まる日のこと)から始まって9月末くらいまでは配達が続くよ。
 歩いて行く場所は全部で14軒の番屋なんだけど、毎日行くからみんな顔なじみになっちゃうんだわ。番屋ではだいたいみんな犬を飼っているんだけど、最初のうちは吠えていた犬が、何度か通ううちにすっかり慣れてしまったりもするね。配達に行ったさきで「○○さんに、伝言お願い!」なんてご近所さんに頼まれることもあるわ。

山本:全部の番屋を歩いてまわるのに、どれくらいかかるんですか?

野田:往復で1時間から1時間半くらいかな。郵便物の他に新聞も代行して配達しているんだけど、夏の間番屋で生活する人たちは、特にこの新聞を楽しみにしてるのさ。羅臼町は町内の法事とかのチラシも新聞に折り込まれるから、情報源としてはとっても大事なものなんだ。だから、なるべく早く届けたい、といつも思っているけど、道路のある町内の配達も一部まわってから行くから、どうしても午後になっちゃうんだよねぇ。郵便物がなくても、新聞は毎日あるから、そんなときは「新聞で~す」なんて言って配達に行くのさ。新聞屋さんじゃなくて、郵便屋さんなんだけどね。

浜辺にならぶ番屋

小包なんかももちろんあって、それも担いで持って行くよ。夏の番屋生活を気遣う知人などから果物とかが送られてくるみたいで、お届けしたら逆に「これ、少し持って行きなさい」なんておすそ分けをいただいてしまったりして、配達の帰り道なのに荷物が減らないなんてこともしばしばだわ。ありがたいよね。

山本:道路もなくて人もあまり通らない場所でしょうから、ヒグマに出会ったりしたことはありませんか?

野田:あるよ。出会った、というか山の斜面にいるのを見たくらいだけどね。番屋に着いたら「よく来たな! さっきまでそこにヒグマがいたんだよ。大丈夫だったかい?」なんて言われたこともあったな。でも、人が番屋に出入りするようになれば、クマもそんなに山からはおりてこないさ。むしろシカに驚かされることがよくあるよ。ガサガサって音がするからヒグマかと思ってびっくりして立ち止まると、ひょこっとシカが藪から出てきた、なんてことたびたびだわ。

 そうそう、夏の観光シーズンなんかは郵便配達やりながら観光ガイドもやったりすることもあるね。配達で歩いているとよく観光客の人に「知床岬まではどのくらいかかりますか?」とか「どんな道ですか?」とか聞かれるんだわ。いつだったか、一緒に岬の方まで歩いて行きたいっていう観光客がいたから、いいですよって一緒に歩いてたんだけど、途中からだんだんついてこれなくなっちゃって、最後はその人、ひきかえしちゃったよ。

 あとは、ゴミ拾いなんてのも時々やるなぁ。特に釣りの時期はけっこう人が歩いて行くのか、コンビニ袋に弁当の食べカスが入ったまま、川の近くに捨ててあったりするんだ。そういうのを見つけると、拾って帰ってくるんだわ。配達の荷物も持ちながらだけど、やっぱりそのまま、ってわけにいかないからね。

山本:郵便配達とひと言でいっても、野田さんがなさっている事はたくさんあるんですね。そんなお仕事を夏の間毎日歩いて行うなんて、大変じゃないですか?

野田:いやいや、そんなことないさ。つらいとか嫌だとか思ったことは一度もないね。車での配達だけよりも、歩いて配達するのもなかなかいいものだよ。特に天気の良い日はすごく気持ちがいいしね。いい運動にもなるし。なによりも、番屋の人たちがみんな僕の配達する郵便物や新聞を毎日心待ちにしているからね。今年でこの地区の配達を担当して4年目だけど、これからもずっとここを担当して行きたいと思っているよ。


 今回のお話から、夏の羅臼の昆布漁は漁師の方だけではなく、野田さんのような方のお仕事によっても成り立っているんだな、と感じました。
 今年の夏も羅臼の海岸沿いに、郵便物をかかえた野田さんの姿を見かけることでしょう。どうかケガなどなさらず、郵便物とともにその素敵な笑顔を届け続けてください。

 

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