

策定の経緯と計画
世界自然遺産知床の地域にとって、ヒグマは草本や魚類等を食べることで①海域と陸域の生態系の担い手であり、②重要な観光資源でもあります。しかし、人を恐れないヒグマの存在や、餌付けをはじめとする人間側の行動の変容を受け、2012年の「知床半島ヒグマ保護管理方針」が策定されてから、現在までに3つの計画が策定されました。
・「知床半島ヒグマ保護管理方針」(2012~2017)
・「知床半島ヒグマ管理計画」(2017~2022)
・「第2期知床半島ヒグマ管理計画」(2022~2028)
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2012年3月、環境省などの関係行政機関は、ヒグマ対策を統一的に推進するための広域的な計画である「知床半島ヒグマ保護管理方針(以下、「保護管理方針」)」を策定しました。これは、知床世界自然遺産地域科学委員会の下部組織である3つのワーキンググループ(エゾシカ・陸上生態系WG、適正利用・エコツーリズムWG、河川工作物AP)から集まった各分野の専門家や、関係行政機関、知床財団などが約2年をかけて議論し、とりまとめたものでした。
2017年3月の計画終了をもって、ヒグマを取り巻く状況の変化を踏まえた「知床半島ヒグマ管理計画(以下、「管理計画」)」を新たに策定、施行しました。相互連携の重要性を考慮し、行政機関(林野庁、北海道および環境省)と世界自然遺産地域と隣接地域(斜里町、羅臼町)に新たに標津町が加わりました。2022年4月より「第2期知床半島ヒグマ管理計画(以下、「第2期管理計画」)」へと移行し、経年的に保護管理を行ってきました。

図5-1. 第2期管理計画の表紙
計画の目的
管理の方策
上記を目的に掲げる第2期管理計画は、2028年3月までを施行期間とし、対象地域(斜里町、羅臼町、標津町)を利用者の多さや経済活動のレベル、住宅の有無などに基づいてゾーニング(図5-2)しています。ゾーン1はヒグマを、ゾーン4は人の暮らしを優先するような段階的な区分になっています。また、出現個体の有害性によってヒグマの行動段階(表5-1)を規定し、それらと各個体の行動履歴に応じて適切な対策を実施することとしています。「問題個体」とは、段階1+以上の個体を示します。

図5-2. 第2期管理計画における知床半島のゾーニング

表5-1. 第2期管理計画における行動段階区分
たとえば、国立公園内の車道沿線(特定管理地)に現れた行動段階1(人を避けないが、人為的食べ物を食べてはいない)の個体に対しては、追い払いが基本対応となります。
一方、斜里本町市街地や羅臼市街地(遺産地域外、ゾーン4)に侵入した行動段階1の個体は、基本的に捕獲されることになります。また、国立公園内の車道沿線(特定管理地)でも、餌付けされた個体(行動段階2)は人身事故を引き起こす危険のある「問題個体」とみなされ、「基本的に捕獲」となります。
このように知床では、画一的な「ヒグマ出没 → 即駆除」ではなく、外見特徴とDNA分析による個体識別に基づく行動履歴の追跡(個体管理)や、この章で説明したゾーニングとヒグマの行動段階区分に基づいた、段階的なヒグマ対応が全域で実施されています。
カメラマン当利用者の中には、「写真を撮りやすいヒグマは、国立公園内でもすぐに撃たれてしまう」と誤解している方がいますが、そんなことはありません。ひどく人馴れしてしまった個体(行動段階1+)であっても、国立公園内の奥山(ゾーン1~2)にいる限りは、いきなり実弾で撃たれるようなことはありません。ただし人為的食べ物(生ゴミや人が与えた食べ物)を口にしてしまったヒグマは、「行動段階2」と判断され捕獲(捕殺)するしかなくなります。
知床の自然を受け継ぐため私たちは、知床で自然を「知り・守り・伝える」活動をしています。
これらの活動は知床を愛する多くのサポーターの皆様に支えられ、今後も支援を必要としています。