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解説3:ヒグマ追い払いのツール(道具)

ヒグマを追い払う際に使う代表的な道具として、散弾銃と、動物駆逐用煙火(どうぶつくちくようえんか)があります。

 

散弾銃を使う場合は、実弾と同じ大きさのゴム弾や花火弾を銃から発射します。

 

ゴム弾はアメリカ製で、有効射程距離は約20 mです。20 mというのはかなり近く、撃つ前に慎重に接近する必要がありますが、きちんと命中すれば、ヒグマに軽い痛みを与えることができます(音だけの場合よりも強い刺激)。ヒグマは「ガウ」と短い声をあげてから逃げ出します。基本的には尻など、筋肉の厚い部位を狙い撃ちします。

 

花火弾は日本製で、やや上に向かって撃ち上げればゴム弾よりも遠くまで飛びます。しかし軽くて風に流されるため、なかなか狙い通りの場所に着弾させることは困難です。発射後数秒間飛行し、ヒグマの近くで炸裂して大きな音を出します。ヒグマは通常ビックリして逃げ出しますが、同じ個体に何度も繰り返すと大きな音に慣れてしまい、逃げにくくなります。

 

そのため、先ずは接近してゴム弾を当てる努力をし、補助的に花火弾を使うようにしています。しかしササヤブの深い場所ではゴム弾がはじかれるため、花火弾を多用せざるをえない場合もあります。

 

ゴム弾、花火弾を使う最大の利点は、万一のヒグマの反撃に備え、弾倉に予備の弾として、実弾も装填しておくことができる点です。知床で過去何百回、何千回と実施されてきたヒグマ追い払いの場面で、知床財団職員がヒグマから反撃を受けて死傷した事例はありませんが、追い払い中の職員に向かってきたといったかなり危険な事例は発生しています。ヒグマはそもそも潜在的には人間を簡単に殺すことのできる強大な力を持っている動物です。交尾期や飢餓状態の時には、通常とは異なる行動をとるような個体もいます。そのため慎重には慎重を期して、実弾も備えるべきでしょう。ちなみに、ヒグマの足下などに実弾(スラッグ弾やライフル弾)を撃っても、それだけでは逃げてくれない、威嚇効果が不十分な状況が過去に何度か認められています。実弾だけを持っていても、うまくヒグマを追い払うことはできないのです。

 

このようにヒグマの追い払いは、散弾銃を用いてゴム弾、花火弾、実弾(予備)のコンビネーションで実施するのが理想的です。ただし、散弾銃は所持や更新に警察の許可が必要であり、誰もが簡単に使うことはできません。更にごく特殊な場合を除けば、市街地の中での発砲や夜間の使用は法律で禁止されています。そこで、銃を使わずに動物を追い払うための専用の花火(動物駆逐用煙火)をヒグマに対して使う場面が出てきます。

 

知床財団が主に使用している動物駆逐用煙火は、品質が信頼できる日本製の轟音玉(ごうおんだま)という商品です。

 

これは導火線に火をつけると約10秒後に爆発する花火で、着火後に手投げ弾のようにヒグマに向かって投げつけて使用します。水たまりや川の中に落ちてもきちんと爆発します。ただし導火線の燃焼状況が見えにくいため、火が消えたと勘違いしていつまでも手に持っていると、手の中で爆発するため大変危険です。また、球技を経験していない人が投げると、とんでもない方向に飛んで行ってしまうようなケースがあることも、難点の1つです。

 

そこで一時期、知床財団ではロケット花火式の動物駆逐用煙火も試験的に導入してみました。しかしこれらは中国製で品質が安定せず、手元で爆発して専用ホルダーが破損する事故などを経験したため、現在は使用をとりやめています。

 

写真3-1. 花火弾(左)とゴム弾(右)


写真3-2. 轟音玉

 

(注記)花火弾について
花火弾の購入および使用は、北海道各自治体の首長等から「狩猟法以外の有害鳥獣駆除(駆遂)従事者」であることを証明する公文書を発行してもらってはじめて可能になる。

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