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旭山動物園「 えぞひぐま館」展示制作記 ~ヒグマと生きる未来を考える~

 

 

 知床財団と旭山動物園は2011年より包括的な連携協定を結び、様々なイベントや展示物の制作を共同で行ってきました。動物の生態やその魅力だけでなく、命の大切さ、人と野生動物の共存について「伝えていく」ことは、両者にとっての一貫したテーマです。
 2022年4月、旭山動物園に新しくオープンした『えぞひぐま館』は、まさに「ヒグマと生きる未来」について考える場として考案されました。今回はこの『えぞひぐま館』で知床財団が制作した展示物と、そこにかける想いをレポートします。

「えぞひぐま館」には路上を再現したガードレールや注意看板などが設置されており、人間社会のすぐそばで野生のヒグマが生息している状況を感じてもらうための様々な工夫が施されています。

 
 



 
 
ヒグマの「とんこ」

1999年、道北の中頓別町の人里に親子のヒグマが出没し、母グマは地域住民の安全のため捕殺されました。子グマは旭山動物園に引き取られ、中頓別の「とんこ」と名付けられました。それ以来、動物園では「人とヒグマの共存」についてより深く来園者に考えてもらいたいという想いを込めてとんこを飼育しています。

 

知床の今を「伝える」

しれとこヒグマ絵巻

 



 メインの展示物である「しれとこヒグマ絵巻」は、知床在住の絵本作家あかしのぶこさんと、知床財団のスタッフが共同で制作した大作です。幅3m、高さ1.5mの巨大なキャンバスに知床半島を描き、そこに生きるヒグマ本来の姿や、人間社会との軋轢、共存のための取り組みなどを細かに描写しています。国立公園内で頻発する「ヒグマ渋滞」や市街地を守るための「電気柵の設置」など、一言では語れないリアルな知床のクマ事情を、大人も子どもも楽しめるよう一枚の絵巻に詰め込みました。

 

 



ヒグマの素晴らしさを「伝える」

ヒグマ絵巻パネル展示



 知床のヒグマ問題を伝える絵巻のほか、野生のヒグマ本来の生態を図解したパネルや、オス成獣の巨大さを実感できる等身大パネルも制作しました。野生のヒグマが豊かな自然の中でどのように生まれ育つのかを知り、その素晴らしさや尊さを感じてもらうことも、私達が伝えたい大切なテーマです。これらはプロ顔負けの画力を持ったスタッフたちが真心を込めて描いた作品です。

 

ヒグマの冬眠穴


 

 また、発泡スチロールの塊を削って制作した「ヒグマの冬眠穴」も渾身の労作です。実際に冬眠穴の調査を行ったスタッフの知見をもとに、リアルな実物大の冬眠穴を作りました。

 内部にはヒグマのツメあとを再現した痕跡や、冬眠中に穴の中で生まれる赤ちゃんグマのぬいぐるみも展示しています。

東園長、旭川市長、知床財団でテープカット!

大盛況の館内には知床のヒグマの映像も展示

 

 



 知床財団の重要なミッションのひとつ、「伝える」活動。レクチャーや講演会だけでなく、展示物を作り、届けることもまた、かけがえのない「伝え方」だと私たちは考えています。
 あかしのぶこさんが創意工夫を凝らして作り上げた作品からは、言葉では言い表すことができないぬくもりや慈しみを感じとることができます。その感動はまるで、子供の頃に動物園で生き生きとした動物に出会った時の「純粋な感性(センス・オブ・ワンダー)」を思い出させてくれるかのようです。

 

 「えぞひぐま館」オープン初日には多くの方が来園され、知床財団の展示物を真剣に見てくださいました。
 近年、旭川や札幌といった都市部においてもヒグマが頻繁に出没しています。「ヒグマと生きる」ということ、人と野生動物がいかに共存していけるかという問いは、決して知床に限った問題ではありません。
 立場の異なる知床財団と旭山動物園両者が「ヒグマとの未来を考える施設にしたい」という同じ想いをもって実現したこの展示が、より多くの方々の目に触れれば幸いです。

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