事務局長のつぶやき

今年のクマ事情②

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一層縮まる人とクマの距離

 前編で今年の出没傾向やクマの様子がいつもと違ったこと、夏場の餌事情が厳しかったことがその原因の一つだった可能性を紹介した。例年に比べて突出して多い目撃数は、今年の特別な状況に起因していると考えられるが、一方で今年に限らず、目撃数自体が年々増加傾向にあることは確かで、その背景に人を気にしないクマの存在がある。全てのクマが人を気にしなくなったわけではないが、確実に増加している。

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 人側のクマに対する反応が変わりつつある。人もクマを恐れなくなった気がする。特に国立公園内では、道路際にクマがいると、たちまち車の渋滞が発生し、車外に出てカメラを構える人々にクマは囲まれる。知床財団では過度の人慣れを防ぐために追い払いを行っているが、それはクマにとって人との出会いのほんの一部でしかなく、追い払いによる学習付けには限界がある。

 

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今年の知床クマ事情①

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『ちょっといつもと違った今年のクマ事情』

出没ピークが1カ月遅れた今年

 知床と言えばヒグマがたくさん暮らすところというイメージをもたれる方も多いと思うが、確かに知床半島(斜里町・羅臼町)におけるヒグマの目撃数は、他地域と比較しても格段に多く、クマの出没に対して住民も比較的冷静である。だが、今年はあまりにも多かった。またただ単に出没が多いだけでなく、その傾向や出没するクマの様子も少しいつもと違った。
 まず目撃数だが、斜里町は昨年のほぼ2倍(1,695件10月末現在)、羅臼町は1.5倍(386件、10月末現在)で、両町合わせると既に2,000件を超えている。また例年だと7月がもっとも目撃情報が多く、8月に入った途端に沈静化する一山タイプか、9月以降秋にまた若干多くなるという二山パターンが普通だが、今年は一山だが、ピークが1カ月遅れた形となり、8月に入っても落ち着くことなく、むしろ大幅に増加した。
 最近は人の存在を気にしないクマの増加で目撃数全体が増加傾向にあるが、それだけでは今年の状況は説明しきれない。別の理由も重なったと考えるほうが自然だ。

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札幌市のヒグマ出没騒動について

 

『札幌市のヒグマ出没大騒動に思う』

公益財団法人 知床財団 統括研究員・事務局長 山中 正実

今、人口190万をこえる北海道最大の都市、札幌がテンヤワンヤの大騒ぎである。都心部に近い中央区の山寄りの市街地にヒグマが出没しているという。すでに十数回の目撃が通報され、クマ騒ぎの話題が連日マスコミをにぎわしている。何らかの原因で住宅地付近に紛れ込んでしまったと思われる1頭の若いクマ(おそらく)に大都市が揺れているのだ。一方、知床では年間のクマの出没件数は、この10年あまりずっと高止まりで600~900件。今回の事件で、あまりに報道関係などからの問い合わせが多いので以下に所見をまとめてみた。ただし、知床は札幌から400kmも離れた遠隔地であり、自然環境も社会環境も全く異なる。また、現地調査をしたわけでもないので、下記はあくまで、一般論、知床での経験や伝え聞く状況証拠からの推測である。

■北海道庁によるドングリ不作原因説は疑問。
北海道のヒグマの秋の主要な食物の一つはミズナラのドングリだが、ミズナラは一つの山でも標高や斜面方位によって豊凶が異なり、広域で同調しない。札幌近郊の山が全山すべて不作なんてことはないだろう。広域的に同調するブナの実の豊凶に敏感に反応して数年おきに大出没を繰り返すツキノワグマの例と安易に同一視できない。広い全道各地の少数の地点でパラパラと、しかも観察手法も統一されていない情報に基づく道庁の説が原因で出没多発なんて言えぬ。
また、ミズナラ以外にもヤマブドウやサルナシ等の代替え餌がいくらでもあり、それらもすべて不作というならまだしも、ドングリだけとりあげて、どうこう言う道庁の説は信頼性が乏しい。

 

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知床のお騒がせグマ第2弾

斜里市街へのクマ侵入に続き、10月26日朝、半島中部の国立公園に接した観光拠点、ウトロの市街地にヒグマが侵入しました。 今朝、6:30頃から7:00過ぎにかけて、ホテル従業員や通行人からヒグマ目撃の通報が相次ぎ、当財団のヒグマ当番職員が持たされている通称「クマ携帯」(24時間受付のクマ通報専用電話)に連絡が入りました。 私を含む財団職員5名ほどが緊急出動。

捜索したところ、クマは海岸段丘上のホテル街付近から、海岸の国道に降りており、さらに国道を渡って道路脇の海岸を歩いているところを発見。 クマは満1才の子を1頭連れた親子連れでした。 海岸沿いに国立公園内に追い戻すことができると判断。 海岸の国道、及び、国道山側に並ぶ住宅地の方に行かれると危険なため、徒歩の者と車輌2台で国道に上がってこないようにプレッシャーをかけながら、追い立てていきました。

いつもの「ホイ!、ホ~~イ!」というかけ声をかけながら、興奮させぬよう注意しながら、ゆっくりと誘導。 国道から丸見えのため、観光バスなどが止まって渋滞が発生しようとしていましたが、そこはいつも連携協力して動いてくれる地元駐在所の警察官が、赤色灯を回したパトカーで「停車せずに、行きなさ~~い!」と、うまくさばいてくれます。 日頃からいっしょにクマ対応をやってもらっているので、そのあたりは慣れたモン。 追い払いの邪魔にならないように、うまく一般車輌を誘導してくれるのです。 約1kmあまり誘導していったところで、国立公園境界の幌別川に到達。 ここで、轟音玉投下、及び、ライフル弾の至近距離への威嚇射撃で、一気に追い立てて8:05対応終了。 今日はたまたまライフル銃しか持ってなくて、ショットガンを用いたゴム弾・花火弾でのより強烈な威嚇追い払い・忌避学習付けができなかったことが残念ですが、淡々と仕事は終了しました。 これがいつもの普通の我々の対応です。市街地中心部へ侵入済みの時には、どちらの方向に追い立てても危険なので、我々自身の手で即射殺することもあります。 しかし、市街の周辺や外縁部に近くて追い払いが可能であれば、学習効果がなく危険性が高い死刑判決済みのクマでない限りは、この様な対応が行われます。 その時々の状況に応じて、柔軟に対策のオプションを繰り出し、住民の安全の確保とクマの無用な捕殺を避けていきます。 ウトロ市街へのヒグマ侵入は今年4回目。 ウトロ市街地をぐるりと取り囲むシカ・クマ侵入防止柵が2006年に完成してから、こんな市街戦は激減しました。 だけど、閉鎖しきれない道路や海岸からの侵入は完全にはなくせません。 これは知床では毎年くり返される日常風景なのです。 今年も「クマの異常出没」が叫ばれ、全国津々浦々で相も変わらずクマと見れば即射殺という「駆除一辺倒」の対策が行われています。 そこには、殺さなくても良い状況も多々あるはずです。 しかし、ゴム弾などの威嚇弾や轟音玉・クマ対策犬による追い払い、クマの行動を熟知した上での誘導技術、電気柵などによる防衛等々、多様な手法を駆使した総合対策は、技術と経験、そして、手間暇を要します。 片手間のボランティアによる猟友会員の対応では無理です。 結局は最も簡単な殺すという選択肢しか出てこないのが現状でしょう。 しかも、そのボランティア頼みの体制さえも、ハンターの減少・高齢化で後10年以内には崩壊するのが火を見るより明らかです。 さまざまな手法による総合対策、地域住民への安全と防衛に関する普及啓発、そして、緊急の際には「射殺」という究極の手段の断行、それらを一体的に実行可能な人材・組織の地域への配置が必ず必要です。 さもなければ、必ず巡り来る「クマの大出没」に対して大量殺戮するのみという先進国として恥ずかしい対応を繰り返すことしかできないのです。 そして、それさえもできなくなる日が、今刻々と近付いてきています。 クマばかりではありません、全国で爆発しているイノシシ、シカ、サル等々の問題についても、各県こぞって「特定鳥獣保護管理計画」等を作って対応しようとしています。 しかし、地方財政が困窮を極める中、機能不全に陥っているもの、そもそも「能書き」に過ぎないものが目立ちます。 「計画」はあっても、そこに「動ける人」がいなければ、打つ手はありません。 この「獣たちの逆襲」に対して、今、日本はどう立ち向かおうとしているのでしょうか? (知床財団事務局長 山中正実) 写真説明:国道脇の海岸を誘導されていく親子グマ。 ©知床財団 能勢 峰

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お騒がせの斜里市街地ヒグマ出没

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斜里市街へのヒグマ出現がマスコミを賑わしているようです。報道されている写真が撮影された場所は、何と斜里町の中心市街。某代議士の実家の中華料理店前でした。
斜里町役場は今朝からマスコミの問い合わせや、どうして撃ったんだぁ~~!?という苦情対応に追われているようです。
クマを直接見た斜里の街中の住民はちょっとビックリだったかもしれませんが、現場では淡々とかつ迅速に対応が終了しました。今年も全国各地でクマ出没大騒ぎですが、知床ではどこやらの町のようにパニックになって大騒ぎすることはありません。
斜里市街突入は初めてでも、これまでも斜里市街ギリギリの接近はありましたし、今回のような市街戦は羅臼町や同じ斜里町でもウトロの市街地では特別珍しいことでも何でもありません。騒いでいるのはむしろ外の人々です。
 斜里町では毎年600~800件ものヒグマ目撃に対して、さまざまな対策を行ってきています。この数字は、2004年、2006年と大爆発したツキノワグマの異常出没の時、大騒ぎしていた一つの都道府県における出没件数に匹敵しています。一つの県全体で驚天動地のパニックを引き起こした件数と同じくらいの状況が、たった一つの町で毎年ごく普通のことなのです。

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