事務局長のつぶやき

繰り返される悪質な不法投棄

 2016年9月17日、知床国立公園、世界自然遺産内、フレペの滝遊歩道にもほど近い道道知床公園線の道路沿いに投げ捨てられた塩鮭。通りがかった観光客の方から通報いただき、幸いヒグマが気づく前に回収することができましたが、本当に許せません。

世界自然遺産、国立公園内でも、毎年のように繰り返される不法投棄。我々はヒグマと人のトラブルを未然に防ぐために、ヒグマを誘引する食べ物や生ゴミなどの管理徹底を呼びかけていますが、一部の心無い行為がすべてを台無しにします。不法投棄は犯罪です。

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来年に向けて

 2015年も残りわずかとなりました。1年を振り返ろうと思いましたが、齢のせいか、もう1年前の記憶も断片的というか、思い出せないので、その断片の中から、ちょっと思い返してみようと思います。
 ヒグマ対応では2012年に次ぐ、目撃・対応件数を記録、その対応に追われました。公園管理では知床岬など先端部地区の利用のルールを定めた知床半島先端部地区利用の心得の見直しが始まりました。野生動物を含む自然環境を資源と考えるなら、その保全と利用のバランスをどのように取っていくかが今大きなテーマとなっています。その上で地域に暮す皆さんや知床を訪れる皆さんに対し、今何がおきていて、何が問題となっているのか、何をしなければいけないか、実現したいのか、客観的事実や私たちの思いを伝え、実現することに試行錯誤した1年でした。深く反省しなければならないところですが、特に伝えることに関して、私たちはまだまだ工夫や努力が足りないと感じています。多くの人の共感を得られなければ、独りよがりな思いでしかないですから。


 今年は知床の世界自然遺産登録から10年の節目の年でした。2005年の登録から、その保全のための体制が整備され、その中で知床財団も現場に携わる立場として、さまざまな分野で関わってきました。この10年の間に、変わったこともあれば、変わっていないこともあります。どちらかというと、自然環境よりも、社会情勢、つまり人に関する部分のほうが変化が大きかったような気がします。


 現在、知床財団は世界自然遺産登録地を抱える羅臼・斜里の2町に展開していますが、10年前羅臼町にはまだ展開していませんでした。知床財団が文字通り、知床全体に関わるようになったのは遺産登録後のことです。知床財団という名に恥じない働きをしているかというと、まだまだ至らない点が多々あります。そういった意味では次の10年、真の意味で「知床の財団」として、地域に根差し、世界自然遺産である知床を深く知り、守り、伝えるという使命を果たすことができるか、問われることになるかと思います。その重さをしっかりと受け止め、前進していきたいと思います。


 事務局長 増田 泰

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2015今年のクマ事情(7月末現在)

 今年のヒグマの出没状況について、7月末現在の速報値をお知らせします。 傾2015目撃数斜里町7月末向を速報するため暫定集計値です。ご了承ください。また斜里町と羅臼町では集計方法が若干異なるため、単純に両町を比較することはできません。各町毎に経年比較していただければと思います。
 春先は例年並みの目撃件数でしたが、斜里町内では6月下旬以降、羅臼町では7月に入ってから、急増しました。特に7月は両町ともに昨年と比べ、2倍以上の目撃件数となっています。7月までの推移は餓死個体が見られた2012年の大量出没年を彷彿とさせます。2015目撃件数羅臼7月末例年は8月になると沈静化しますが、2012年は8月になっても収まりませんでした。8月の動向が注目されるところです。

 今年の特徴の一つは特定の親子グマに起因する遭遇事例が多発していることです。いずれも人や車を気にせず、遊歩道や車道に子連れで出没しています。知床峠付近の知床横断道路上では1歳2頭連れの親子が出没し、羅臼湖へのトレッカーやサイクリストが至近距離で遭遇したり、威嚇突進されるなどの事例がありました。移動速度の速い自転車やバイクは突発的な至近距離での遭遇の恐れが徒歩に比べて高い上、自動車に比べて無防備です。ヒグマを目撃した場合、無理に通過しようとしないこと、特に自転車の場合、あわてて逃げ切ろうと思わずに、ゆっくり後退してください(→ヒグマ対処法)羅臼湖へのアクセスについては路線バス利用という選択もあります。
 また斜里町側の国立公園内では知床自然センター周辺、フレペの滝遊歩道では0歳2頭連れと1歳2頭連れの2組の親子が毎日のように出没、フレペの滝遊歩道の閉鎖が続き、この状況は8月7日現在も変わっていません。1歳2頭連れ母グマのほうは停車した車に手をかけたところを撮影され、大きく報道されました。これら親子に限らず、国立公園内では車両に威嚇突進する事例が今年は複数確認されており、懸念材料の一つです。道路際での出没はかつて亜成獣や単独メス成獣が主でしたが、子連れ親子の出没も多くなっています。親子の場合、子が親と反対側の道路際に取り残された状態で、その間に車が停車すると、人が気付かないうちに親子を分断し、クマをいら立たせてしまい、威嚇突進を誘発する場合があります。クマ渋滞に起因する交通事故も発生しています。クマを道路際で見かけても、停車せずにゆっくり、静かに、速やかに移動してください。

頻繁に出没している1歳2頭連れ親子

頻繁に出没している1歳2頭連れ親子

頻繁に出没している0歳2頭連れ親子

頻繁に出没している0歳2頭連れ親子

 また羅臼町側では、7月に入り民家周辺への出没が相次ぎました。7月の目撃数は2012年の大量出没年を上回っています。夜間民家周囲に出没し、外に置いてあったゴミ箱が荒らされるといった事例も発生しました。山と海に挟まれた海岸線沿いのわずかな平坦地に住宅が立ち並ぶ羅臼町では、ヒグマの生息域とヒトの生活圏が面で接しているため、油断できません。2012年は8月に民家周辺への出没が頻発し、対応に苦慮しました。住民のみならず観光客のみなさまにも、ゴミの管理はもちろんのこと、ヒグマの食べ物となりうるあらゆるものの管理徹底をあらためてお願いします。

ヒグマに荒らされたゴミ箱

ヒグマに荒らされたゴミ箱

 

 

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2014今年のクマ事情

  今年も残りわずかとなりましたが、簡単に今年の状況をまとめてみました。あくまでも集計途中の速報値ですので、傾向としてとらえていただければと思います。ちなみに一昨日(12月25日)夜、職員が帰宅途中に知床自然センター近くの道路上でクマを目撃しています。
 まだ冬眠していないクマもいますので、野外活動の際は注意してください。

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斜里町月別ヒグマ対応件数 斜里町月別ヒグマ目撃件数
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羅臼町月別ヒグマ対応件数 羅臼町ヒグマ目撃件数

 今年の斜里町羅臼町のヒグマ対応件数と目撃件数を月別に比較しました。今年は初夏までは例年と同様に推移しましたが、夏以降平穏な状況が続き、秋以降も大きな変化はなくそのままシーズンを終えました(紫色が今年です)。昨年斜里町では国立公園内のイワウベツ川でマスを狙う特定の若グマと、そのクマを狙うカメラマンで混乱、対応件数も9、10月と多くなりました。しかし、今年は両町ともに秋のサケマス遡上シーズンの河口や河川沿いでの目撃、対応が極めて少なく、平穏でした。これはサケマスの遡上が少なかったこと、8月のハイマツ、9月以降のミズナラをはじめ、液果、堅果問わず木の実の類が軒並み豊作だったことで、そちらにクマたちがシフトしたことが影響しているのではないかと思われます。自然情報でもドングリの大豊作が話題になりました。今年同様にカラフトマスの遡上が遅れ、遡上数も少なかった一昨年(2012年赤色)はハイマツの不作なども重なったこともあってか、特に7月後半から9月にかけて大量出没となり、餓死したクマも発見されました。グラフを見ても一昨年がいかに特異な年であったかが、わかると思います。
 サケマスの遡上時期や遡上数、木の実の豊凶などが出没状況に影響することは間違いありませんが、サケマスだけ、ドングリだけの豊凶を見てわかるほど単純ではないようです。複雑にいろいろな条件が絡み合っている気がします。正直言って今年の秋は少し戸惑いを覚えるぐらい、極めて平穏でした。確かに今年ドングリは大豊作でしたが、本当にそれだけを理由にしていいものなのかとも思ってしまいます。ちょっと不気味なぐらい平穏でした。

 また今年は例年と比較して、0歳連れの親子をよく見かけました。これは推測にすぎませんが、夏の食糧事情が厳しかった一昨年(2012年)に子を失ったメスが多く、昨年の発情期に発情、受胎したメスが多かったのかもしれません。無事に育っていれば、来年は親から離れた1歳子たちが多くみられることになります。彼らがおとなしくしていてくれるか・・・、少しそれが今から心配です。
 2015年は今年よりもさらに、平穏な年でありますように。人にとってもクマにとってもよい年でありますように・・・(増田)。

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遊歩道を埋め尽くしたミズナラのドングリ 道路上にデンと残されたドングリ100%のウンチ
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イワウベツ川のクマ、その後・・・

 昨年秋、このコーナーでイワウベツ川に出没する複数の若グマと、カメラマンや観光客との至近距離での危うい接近についてご紹介しました。秋も深まるにつれて観光客やカメラマンの数は少しずつ減っていきましたが、このクマたちの出没自体は11月末道路が冬季閉鎖となるまで続きました。その間周辺道路のパトロールや、花火やゴム弾での追い払いや忌避学習付け(人前に姿をさらすと嫌な目に遭うと学習させる)を繰り返し行いましたが、行動に変化はありませんでした。

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 今年4月、雪解けが進む中、我々は彼らの行方がとても気になっていました。冬眠から目覚めると、いろいろな意味で成長して、もう人前にノコノコ出てくるようなことはなくなるのではないかと、淡い期待も少しありました。
 が、期待はあっさり裏切られました。4月中旬冬期通行止めが解除されると、2頭はイワウベツ川周辺で目撃されるようになりました。
 そして4月下旬には、2頭のうち1頭が国立公園から出て知床半島基部方向に海岸線に沿って移動を始めました。連休の最中5月5日には、観光の車が行きかう国道沿いでエゾシカを捕食、見物する車で渋滞が発生、一度追い払いましたが、再び同所で別のシカを捕まえて再出没、9日には国道上を歩き、車が立ち往生、たまたま通りかかった地元の人がクマ撃退スプレーで追い払うといったことがありました。この間、我々も出没情報が入る度に現場に急行し、花火やゴム弾などでの追い払い、忌避学習付けを試みましたが、やはり出没状況に変化はありませんでした。そして連休明けの10日にはさらに半島基部方向に移動、広大な農業地帯となる斜里町峰浜集落の国道上や休業中のドライブイン駐車場を徘徊、再び国道上をウロウロ横断して藪に入ったところで最終的に駆除となりました。結果的に最期まで人に対する警戒心に乏しく、至近距離まで人や車に接近したり、白昼堂々と路上をウロウロするといった行動は変わりませんでした。

 出没時の花火やゴム弾などでの追い払いが、効果を発揮して人前に出てこなくなるクマも多くいます。しかし一方で、このクマのように効果が見えないまま出没を繰り返し、出没、追い払いのイタチごっことなるケースもあります。かつてこのようなクマを生け捕りにして別の場所で放す移動放獣を試みたことがありますが、すぐに戻ってきてしまい、知床では成功していません。残念ながら、こうなってしまうと、決め手に欠く状況となってしまいます。

 最近ではヒトではDNA解析の技術がさまざまな場面で活用されていますが、クマにおいてもDNA解析から個体識別をしたり血縁関係を知ることで、そのクマの経歴を辿ることができるようになりました。峰浜で駆除となったこのクマのDNAを解析※したところ、やはり昨年秋にイワウベツ川に出没していた2頭のうちの1頭(オス)と同一であることがわかりました。一般的に親離れ後、オスはメスに比べ、生まれた場所から大きく移動分散すると言われていますが、結果的にその通りとなっています。母親から独立した若いオスにとって、生まれ育ったエリアからの分散は試練の時だと言えます。
 またもう1頭(メス)のほうは少なくとも5月上旬までは保護区の境界付近にとどまっていたようですが、この2頭は異母兄妹であったことが採取した皮膚片のDNA鑑定から明らかになりました。仲良く2頭で出没していたことから、同じ母親から生まれた兄弟姉妹(同腹子)と思っていましたが、父親は同じで、母親は異なるということは、この2頭は異なる母親から独立した後にたまたま出会い、行動を共にすることとなったようです。クマの場合、父親は子育てに参加しませんので、本人たちは父親が同じであることはわからないはずです。

 その他にもDNA鑑定から詳しいこのクマの経歴がわかりました。母親は以前から知床五湖やイワウベツ周辺で目撃されていたクマで、DNAによる親子判定から、一昨年秋、イワウベツ川流域にある温泉ホテルのゴミ箱を破壊し、生ゴミを食べているところを駆除された若グマがこの母親の子であることがわかっていますのでイワウベツ川流域を行動圏としているようです。そして同じ年にこの母親は5月上旬、7月上旬と、イワウベツ川で1歳の子2頭を連れているところを目撃されています。その後、7月下旬には単独の母親が目撃され、その後2頭が頻繁にイワウベツ川で目撃されるようになったことから、この時点で2頭は母親から独立したようです。この2頭は一昨年の夏、人を見ても無反応で、しばしば数メートルの距離でカメラマンに囲まれて撮影されていた1歳のクマたちです。このうちの1頭が今回のクマで、もう1頭はその後姿を消し(このクマの消息は不明です)、どこかで異母の同齢メスと出会い、昨年はこのメスと行動を共にしていたことになります。つまり峰浜で駆除された時このクマは3歳ということになります。
 昨年一緒に行動していた2頭のうち、母親の行動域を離れ、保護区の外に出たオスは結果的に命を失いました。一生ずっと保護区の中、国立公園の中にとどまっていたのであれば、人を気にしないふるまいは許容されたかもしれません。しかし、この若いオスグマのように保護区を出て、人の暮らしがある集落の近くで同じようなふるまいを続ければ、やはり許容することは難しくなります。さらに躊躇なく人の暮らしがあるところに近づくとなれば、生ゴミに餌付くなど今度は食べ物求めて積極的に人に近づく危険なクマへと変貌するリスクも高くなります。
 一方で保護区内、国立公園内では、クマを見たいと思って訪れている人も多くいます。恐れず至近距離まで人に接近するあるいは人の接近を許容するクマの存在を否定するどころか、むしろ歓迎するかもしれません。クマが同じふるまいをしても、人がそれを許容できるか否かは時と場所で変わってしまうということです。クマの立場からすれば、人の身勝手と映るかもしれません。クマのほうも保護区内では人から危害を受けることはあまりありませんし、人のほうもクマも見たい、写真を撮りたいと距離を詰めると、両者の距離は今後も縮まる方向に進むはずです。人もクマもお互い許容度が高まれば、突発的な遭遇などによる事故の恐れは減少するでしょうが、一方でこれまでなら考えられなかったような場所、時間帯の出没、例えば昼間に街中や道路上に出没するといったケースは増加すると思います。クマの管理が保護区内だけでは収まる話ではない以上、保護区内も含めた人の管理も同時に進めなければ片手落ちになってしまいます。
 これからどのように保護区内、保護区外でクマと向き合っていくのか?知床での人とクマの関係はまた新たな局面を迎えています。


※DNA解析によるヒグマの血縁関係の研究は、ダイキン工業株式会社様の支援によって、北海道大学獣医学部・知床博物館・知床財団の共同研究として実施しています。

 

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2012年7月。恰好の撮影対象に。

行動を共にしていた兄弟姉妹と思われる

もう1頭は2013年以降姿を確認していない。 

 

2012年10月。サケマス孵化場侵入。
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2013年9月。

別の同齢メスと行動を共にするようになる。

 

2013年9月。

駐車中の車を物色。

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2013年10月。

この年も恰好の撮影対象に。

 

2013年11月。

相変わらずイワウベツ川沿いに。

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2014年4月。

2014年5月。国立公園外へ、移動。

 

 

 

 

 

 

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